暗号資産投資のリスクとは?個人が損をしやすい仕組みと判断基準

はじめに¶
SNSを開くと、「暗号資産で資産が何倍にもなった」「若くして家や高級車を買った」といった投稿が目に入ります。真面目に働いているのに貯金が増えないと感じていると、自分だけが取り残されているような焦りを覚えることもあるでしょう。この記事では、暗号資産投資のリスクと利益を得やすい立場の違いを整理し、家計を守りながら投資を判断する方法を考えます。
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暗号資産で利益を得るのは購入者だけではない¶
暗号資産市場には、コインを購入する個人だけでなく、取引所、大口投資家、広告を出す企業、案件を紹介するインフルエンサーなど、さまざまな参加者がいます。
重要なのは、それぞれが同じ条件で利益や損失を負っているわけではないことです。
取引所は売買されるたびに収益を得る¶
暗号資産取引所は、利用者が売買するたびに手数料などの収益を得る事業です。利用者が利益を出したか、損失を出したかにかかわらず、取引が行われれば取引所には収益機会が生まれます。
価格が下がって不安になり売却する。別のコインが上がっているのを見て、乗り遅れたくないと買う。損を取り戻そうとして、さらに資金を入れる――。こうした感情的な売買が増えるほど、取引所に支払うコストも積み上がります。
原稿では、コインベースが市場の活況期だった2021年に、取引関連を中心として約9,750億円の収益を上げ、2023年には約1,950億円まで減った例が紹介されています。市場参加者の感情が大きく動く時期ほど、売買が活発になりやすいことを示す一例です。
大口投資家には先に売却できる余地がある¶
ニュースやSNSで価格上昇が広く知られ、個人投資家が買い始めるころには、早い時期に購入していた参加者が利益確定を始めている場合があります。
原稿で紹介された95か国を対象とする国際決済銀行の分析では、暗号資産を購入した人の73%から81%が損失を出した可能性があり、平均的な損失は最初に入れた金額の48%とされています。すべての購入者が損をするという意味ではありませんが、多くの個人が価格上昇後に参加していた点には注意が必要です。
また、参加者のうち大きな割合を占めた29%は中間所得層でした。一方、参加者の22%にあたる富裕層が、市場全体の資産の40%を保有していたとされています。
「誰でも参加できる市場」であることと、「誰もが同じ条件で取引できること」は同じではありません。保有資金、情報、購入時期、損失への耐久力が違えば、取れる行動も変わります。
インフルエンサーは価格に関係なく報酬を得る場合がある¶
インフルエンサーが暗号資産を紹介する場合、その資産が上がっても下がっても、紹介した側には先に広告報酬が支払われることがあります。価格変動のリスクを最後まで引き受けるのは、動画や投稿を見て購入した側です。
原稿では、ビットボーイ・クリプトとして知られたベン・アームストロングが、宣伝動画1本に約600万円を求めたとされる例が紹介されています。また、キム・カーダシアンは、報酬を受け取って暗号資産を宣伝した事実を十分に開示しなかったとして、米国証券取引委員会から約1億8,900万円の支払いを命じられました。
有名人が紹介していることは、その暗号資産の安全性や将来性を保証する材料にはなりません。宣伝を見るときは、紹介者がどのような利益を得る立場なのかも確認する必要があります。
暗号資産投資で損をしやすくなるFOMOとは¶
FOMOとは、「自分だけが機会を逃しているのではないか」という恐怖や焦りを指します。
友人が高級車の写真を投稿している。同僚が「資産が大きく増えた」と話している。動画では若い人物が、短期間で豊かになる方法を語っている――。こうした情報に囲まれると、暗号資産の仕組みを理解しているかどうかより、「今すぐ買わないと遅れる」という気持ちが先に立ちます。
原稿で紹介された調査では、暗号資産購入者の75%が、ビットコインが約300万円の高値を超えた2020年末以降に取引アプリを使い始めていました。本人は早く参加したつもりでも、すでにニュースやSNSで話題になり、価格が上昇した後だった可能性があります。
SNSで目立つのは、利益を出した人の投稿です。損失を抱えた人は、同じようには発信しないかもしれません。利益画面も、売却して確定した後の金額とは限りません。こうした「成功した例ばかりが見える状態」を、生存者バイアスとして意識することが大切です。
貯金180万円が27万円になった健太さんの例¶
原稿では、29歳の会社員・健太さんの事例が紹介されています。
健太さんの月収は24万円で、夫婦が暮らす部屋の家賃は月8万4,000円。2021年末ごろ、夫婦で住宅の頭金として貯めていた180万円を、妻へ詳しく説明しないまま暗号資産市場へ入れました。
購入したのは、ビットコインが約1,035万円に達した2021年11月ごろです。毎日のように価格が上がり、「買わなければ損をする」と感じていました。
しかし、2022年12月には180万円が27万円まで減少。失った金額は153万円です。
健太さんは1時間に一度ほど価格を確認し、結婚記念日の食事中も妻との会話よりチャートが気になっていました。13か月間損失に耐えた後、心身ともに疲れ、売却しました。
この例から分かるのは、投資の損失が口座残高だけの問題ではないということです。
- 家族へ言えない不安を抱える
- 睡眠時間が減る
- 家族との会話に集中できなくなる
- 自分の判断に自信を持てなくなる
- 売却後の値上がりを見て、さらに後悔する
投資額を決めるときは、「失っても生活費を払えるか」だけではなく、「大きく下がった状態でも落ち着いて暮らせるか」まで考える必要があります。
手数料と機会費用も暗号資産投資のリスク¶
暗号資産では、価格の下落だけが損失の原因ではありません。売買手数料、価格のずれ、交換時の差額なども資産を減らします。
原稿では、60万円を入れて1年間に10回ほど売買を繰り返した場合、年間で元本の4%から30%を失うこともあると説明されています。実際のコストは取引方法やサービスによって異なりますが、取引回数が増えるほど負担が重くなりやすい点は見落とせません。
失ったお金が将来生んだ可能性も考える¶
投資で失うものには、「機会費用」もあります。これは、別の方法にお金を使っていれば得られたかもしれない将来の価値です。
原稿では、毎年60万円を世界中の株式へ分散するインデックスファンドに積み立て、長期的に年6%で運用できたと仮定した場合、10年後には約790万円、20年後には約2,200万円になる例が示されています。
また、毎月6万円を20年間積み立て、年6%で運用できた場合は、約2,700万円から2,800万円になるという試算もあります。
ただし、年6%は仮定であり、毎年同じように増えることや、将来の運用結果を保証するものではありません。インデックス投資にも値下がりはあります。
ここで注目したいのは、短期的に上がる資産を当てる方法ではなく、長い時間と複利を使う考え方です。住宅の頭金、教育費、老後資金など、目的のある貯金を投機的な取引へ回す前には、失った場合の将来への影響まで確認しましょう。
暗号資産ETFなら安全なのか¶
2024年1月、米国で現物型ビットコインETFが承認されました。証券口座を通して購入できるため、秘密鍵の紛失や、無名の取引所へ直接資産を預けることに伴う一部のリスクは小さくなります。
しかし、ETFという形になっても、ビットコイン自体の価格変動がなくなるわけではありません。
ETFは購入・保有の入口を整える手段であり、投資対象そのものの価格を安定させる仕組みではないからです。暗号資産ETFを検討する場合も、通常の暗号資産と同様に、大幅な値下がりを想定する必要があります。
また、暗号資産がすべて無価値というわけでもありません。原稿では、銀行制度が十分に機能しない地域や通貨価値が急落する国で、国際送金などに役立つ場合があると説明されています。
技術や送金手段としての用途と、「短期間で資産を増やす投資対象」としての期待は、分けて考える必要があります。
家計を壊さないための5つの判断基準¶
暗号資産へ投資するかどうかに、すべての人へ共通する一つの正解はありません。生活状況や資産、目的、リスク許容度によって判断は変わります。
少なくとも、次の点は事前に確認しておきましょう。
1.生活目的の貯金を使わない¶
住宅の頭金、教育費、生活費など、近い将来に使う予定があるお金は、大きな価格変動へさらすと暮らしに影響します。
「値下がりしても長く待てるお金か」を考えることが必要です。
2.借金やレバレッジを使わない¶
借金で暗号資産を購入し、市場が大きく下落すると、資産が消えても返済は残ります。
原稿では、市場が一晩で40%下がる仮のケースが示されています。カードローンやクレジットカードを利用すれば、失った資産のために返済を続ける状況にもなりかねません。
3.高い利回りの出どころを確認する¶
「安全に年12%ほどの利息を受け取れる」といった説明を見たら、なぜその利回りを支払えるのかを確認する必要があります。
仕組みを自分の言葉で説明できない場合は、利息だけを見るのではなく、運営会社、資産管理の方法、破綻時の扱いなども慎重に確認しましょう。
4.失っても生活を壊さない範囲に抑える¶
原稿で紹介された考え方では、積極的にリスクを取る場合でも暗号資産は資産全体の一部に抑え、安定を重視するなら0%も選択肢とされています。
暗号資産を持たないことも、乗り遅れではありません。保有する場合も、全財産を一度に入れることと、損失を受け止められる範囲で限定的に持つことは明確に異なります。
5.SNSを見た直後に買わない¶
焦っているときは、価格、広告、成功談の影響を強く受けます。購入前には、次の質問を自分にしてみましょう。
- この資産の仕組みを説明できるか
- 上昇後の話題性だけで買おうとしていないか
- 紹介者は広告報酬を受け取っていないか
- 半値近くになっても生活を続けられるか
- 家族に隠さず説明できる金額か
- 売却条件を決めているか
どれか一つでも答えられないなら、すぐに購入せず、立ち止まるという判断ができます。
暗号資産とインデックス投資は目的が異なる¶
暗号資産とインデックスファンドは、値動きやコストだけでなく、資産形成における役割も異なります。
原稿では、一般的なインデックスファンドには信託報酬が年1%未満の商品も多いと説明されています。幅広い企業や地域へ分散する商品であれば、一つの資産の急上昇を狙うより、経済全体の成長へ長期間参加する考え方に近くなります。
もちろん、インデックス投資でも元本割れは起こり得ます。長く持てば必ず利益が出るわけでもありません。
それでも、短期的な値動きを予想して何度も売買する方法と、低コストの商品へ定期的に積み立てる方法では、求められる判断や生活への影響が違います。
健太さんは損失を妻へ打ち明けた後、給料から残ったお金を自動で積み立てる方法へ切り替えました。現在はTOPIXなどに連動する低コストのインデックスファンドを中心に持ち、アプリを開くのは多くても月に一度。短期売買はしていないといいます。
これは誰にでも共通する正解ではありませんが、価格を頻繁に確認しなくても続けられる方法を選ぶことは、家計と心の安定を守る選択肢になります。
暗号資産投資のリスクに関するFAQ¶
暗号資産を買うと必ず損をしますか?
必ず損をするわけではありません。価格上昇によって利益を得る人もいます。ただし、原稿で紹介された分析では、多くの購入者が損失を出した可能性が示されています。購入時期、保有割合、取引コストなどを含めて判断する必要があります。
ビットコインETFなら初心者でも安心ですか?
ETFによって秘密鍵の管理や取引所に関する一部のリスクは軽減できますが、ビットコイン自体の価格変動は残ります。「ETFだから価格も安定している」とは限りません。
暗号資産とインデックス投資はどちらがよいですか?
投資目的やリスク許容度によって異なります。短期的な値上がりを期待する資金と、生活や将来に必要な資産形成のお金を同じように扱わないことが大切です。安定を重視して暗号資産を持たない判断もあります。
暗号資産で損失が出ているときはどう考えればよいですか?
「買値に戻るまで待つ」という気持ちだけで判断せず、現在の保有額、生活への影響、追加損失に耐えられるかを確認しましょう。睡眠や家族関係に影響している場合は、それも無視できないコストです。
借金をして暗号資産を買ってもよいですか?
原稿では、借金やレバレッジを使った投資は避けるべきだとしています。価格が下落して資産価値が減っても、借金と利息の返済は残るためです。
まとめ:焦りではなく、家計を守れる数字で判断する¶
暗号資産市場では、購入者だけが利益を得るわけではありません。取引所は売買から収益を得て、インフルエンサーは価格が下がる前に広告報酬を受け取る場合があります。早く参加した大口投資家には、価格上昇後に利益を確定できる余地もあります。
一方、後から参加した個人は、価格変動、取引コスト、FOMO、生活への影響を引き受けることになります。
覚えておきたい判断ポイントは、次のとおりです。
- SNSの成功談だけで投資を決めない
- 生活費や目的のある貯金を投資へ回さない
- 借金をして投資しない
- 高い利回りが生まれる仕組みを確認する
- 保有するなら生活を壊さない範囲に抑える
- 低コスト・長期・分散という選択肢も比較する
- 暗号資産を持たない判断も認める
資産形成には、派手な物語が必要とは限りません。夜中まで価格を確認するより、安心して眠れる家計をつくり、無理のない方法を長く続けることも一つの考え方です。
「ファイナンスおばさん・ななみ」 を購読し、焦りに振り回されない投資と家計の考え方をこれからもチェックしてみてください。
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ご注意
本記事は情報提供・エンターテインメントを目的としたものであり、投資・金融 アドバイスを行うものではありません。投資に関する最終判断は、ご自身の責任 において行ってください。



