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住宅ローンの繰り上げ返済と投資はどっち?数字と安心感で比較

投資の値動きと住宅ローン残高の減少を比較したイメージ図

はじめに|数字だけでなく安心感も比較する

毎月きちんと住宅ローンを返しているのに、元金が思ったほど減っていない。そんな状況で余裕資金ができると、「繰り上げ返済をするべきか、それとも投資に回すべきか」と迷う方は少なくありません。

投資には、長期的に資産を増やせる可能性があります。一方、繰り上げ返済には、将来支払う利息を減らし、住宅ローンから早く自由になれるというメリットがあります。

ただし、数字上の期待値だけで答えが決まるわけではありません。市場が下落したときの不安や、借金を抱え続けるストレス、必要なときに使える現金の有無も大切な判断材料です。

この記事では、具体的な住宅ローンの試算をもとに、次の3つの選択肢を比較します。

  • 投資を優先する
  • 繰り上げ返済を優先し、完済後に投資する
  • 投資と繰り上げ返済を半分ずつ行う

なお、以下の結果は一定の条件に基づく試算です。投資の収益や実際の完済時期を保証するものではありません。

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比較に使う住宅ローンと余裕資金の条件

今回の試算条件は、次のとおりです。

項目 条件
住宅ローン借入額 7500万円
返済期間 30年
金利 年2%・固定
追加返済・投資の開始 返済開始から1年後
毎月の余裕資金 16万円
余裕資金の増加率 毎年3%
投資の想定リターン 年6%
比較期間 残り29年間

投資先は、全世界株式や米国株式などのインデックスファンドを想定します。

長期の株式投資では、年5~7%程度の名目リターンが想定に使われることがありますが、毎年同じ割合で増えるわけではありません。今回は比較のために年6%を使います。

住宅ローン金利は、時期や金融機関、審査条件、固定金利か変動金利かによって異なります。ここでは、長期固定型を想定して年2%で計算しています。

住宅ローンを返しても元金が減りにくく見える理由

年2%、30年返済で7500万円を借りた場合、毎月の返済額は約28万円です。1年間に支払う金額は約333万円になります。

しかし、最初の1年間に減る元金は約185万円です。残りの約148万円は利息で、1年後のローン残高は約7315万円となります。

最初の月の返済額を分けると、次のようになります。

  • 毎月の返済額:約28万円
  • 利息:約12万5000円
  • 元金:約15万5000円

割合では、利息が約45%、元金が約55%です。

元利均等返済では、返済初期ほどローン残高が大きいため、利息額も大きくなります。そのため、返済を続けていても「思ったほど元金が減っていない」と感じやすいのです。

変動金利を利用している場合は、将来の金利上昇にも注意が必要です。金利が上がれば、同じ残高でも利息負担が増え、家計を圧迫する可能性があります。

ケース1:毎月16万円を投資に回す

まずは繰り上げ返済をせず、毎月の余裕資金をすべて投資するケースです。

返済開始から1年後に毎月16万円の積立を始め、積立額を毎年3%ずつ増やします。これを残り29年間続け、年6%で運用できたと仮定すると、最終的な投資資産は約1億9600万円になる試算です。

長い運用期間を確保できることが、この方法の強みです。複利の効果を受けやすく、将来の資産額が大きくなる可能性があります。

一方で、年6%はあくまで計算上の想定です。株式市場には大きく上昇する年もあれば、資産額が大幅に減る年もあります。元本や収益は保証されません。

投資優先の主な特徴

  • 長い運用期間を確保できる
  • 試算上は最終資産が大きくなりやすい
  • 必要に応じて売却できるため、住宅に資金を入れるより流動性がある
  • 市場下落によって資産が減る可能性がある
  • 住宅ローンは予定どおり残り続ける

ケース2:繰り上げ返済を優先して完済後に投資する

次は、毎月16万円を住宅ローンの繰り上げ返済に使うケースです。投資との条件をそろえるため、追加返済額を毎年3%ずつ増やします。

繰り上げ返済に使ったお金は、手数料などを別にすれば、原則として元金を直接減らします。元金が減れば、その後にかかる利息も少なくなります。

今回の条件では、30年の住宅ローンを約15年で完済できる計算です。

  • 通常返済における利息総額:約2480万円
  • 繰り上げ返済をした場合の利息総額:約780万円
  • 削減できる利息:約1700万円

ただし、1700万円が無料で生まれるわけではありません。投資に使えた余裕資金を住宅ローンへ入れた結果として、将来の利息を減らしています。

また、元金を返せば負債は減りますが、そのお金を必要なときにすぐ引き出すことはできません。自宅の純資産が増えても、現金や投資資産ほど自由には使えない点に注意が必要です。

完済後に投資を始めるとどうなる?

約15年で完済すると、毎月約28万円の通常返済がなくなります。さらに、完済時点の繰り上げ返済額は月24万円前後となっているため、合計で月約52万円が自由になります。

この約52万円を残り約15年間、年6%の想定で投資すると、投資資産は約1億4500万円になる計算です。削減できた利息約1700万円と合わせた経済的な効果は、約1億6200万円となります。

投資だけを続けた場合の約1億9600万円と比べると、試算上は約3400万円少ない結果です。

ただし、約15年早く住宅ローンを完済できる安心感があります。市場の状況とは関係なく、将来の利息を減らせることも繰り上げ返済の特徴です。

投資の試算で注意したい「リターンの順番」

投資の計算では、毎年6%ずつ滑らかに増えるように見えます。しかし、現実の市場はそのようには動きません。

大きく上昇する年もあれば、資産が大幅に減る年もあります。長期の平均リターンが同じでも、好調な年と不調な年をどの順番で経験するかによって、結果は変わります。これが「シークエンス・オブ・リターンズ・リスク」です。

たとえば、2007年10月ごろの世界金融危機直前から投資を始めた場合、その後すぐに大きな下落を経験します。最初の8年間の実質的な運用結果が、年4~5%程度にとどまることがあります。

一方、2009年3月ごろの市場が大きく下がった時期から始めた場合は、その後の回復を早い段階から受け取れます。同じ8年間でも、年17%を超えるような結果になる可能性があります。

積立投資には、価格が下がったときに多くの口数を購入できる面があります。それでも、資金が必要になる直前に市場が下落すれば、計画どおりに使えないかもしれません。

これに対し、固定金利が変わらない前提なら、繰り上げ返済による利息削減は市場の値動きに左右されません。年2%の住宅ローンを返せば、その元金に対して今後発生する年2%相当の利息を減らせます。

期待リターンの大きさだけでなく、「不確実な成長」と「確定的な利息削減」の違いを理解することが大切です。

ケース3:投資と繰り上げ返済を半分ずつ行う

投資か返済かを、必ずどちらか一方に決める必要はありません。

番組では、余裕資金を投資と繰り上げ返済に分ける考え方を「Fスクエア・ルール」、または「フリーダム・ファンド・ルール」と呼んでいます。

たとえば毎月16万円のうち、8万円を投資、8万円を繰り上げ返済に回します。どちらも毎年3%ずつ増やす前提です。

この場合、試算結果は次のようになります。

  • 住宅ローンの完済:約20年後
  • 短縮できる期間:約10年
  • 削減できる利息:約910万円
  • 当初から続ける投資:約9800万円
  • 完済後の追加投資:約6000万円
  • 経済的な効果の合計:約1億6700万円

約20年で完済すると、通常返済の約28万円と、その時点の繰り上げ返済額である月約14万円が不要になります。その約42万円を残り約10年間投資すると、追加投資は約6000万円になる計算です。

投資だけを続けるケースより約2900万円少ない試算ですが、住宅ローンを約10年早く完済できます。資産形成を続けながら、負債も着実に減らせる方法です。

配分は半分ずつである必要はありません。

  • 資産形成をやや優先するなら、投資60%・返済40%
  • バランスを取りたいなら、投資50%・返済50%
  • 長い運用期間を生かしたいなら、投資70%・返済30%
  • 退職が近く返済負担を減らしたいなら、投資30%・返済70%

これらは一例であり、年齢だけで機械的に決めるものではありません。収入の安定性やローン金利、家族構成、リスクへの感じ方も含めて考えます。

住宅ローンの繰り上げ返済を優先しやすいケース

金利が高い借金を抱えている

クレジットカードのリボ払いやカードローン、消費者金融などで、年15~18%近い金利を負担している場合は、投資より先に返済を検討するべきです。

株式投資で毎年安定して15%以上の利益を得ることは現実的ではありません。高金利の借金を減らすことには、大きな確定効果があります。

退職まで10年を切っている

退職後も住宅ローンが残ると、毎月の生活費に返済負担が加わります。退職が近い場合は、資産額だけでなく、老後の固定費を減らす視点も重要です。

仕事や収入が不安定である

失業と市場下落が重なれば、値下がりした投資資産を売って返済に充てなければならない可能性があります。負債を減らすことは、家計が行き詰まるリスクを抑えることにもつながります。

借金が心身の負担になっている

住宅ローンを考えるたびに眠れない、強いストレスを感じる、家族との関係に影響が出る。そのような場合は、数学上の期待値よりも早期返済を優先する考え方があります。

心の平穏には、金額だけでは測れない価値があります。

投資を優先しやすいケース

住宅ローン金利が低く、長期間固定されている

年1%未満の低い固定金利を長期間確保できている場合は、急いで返済せず、長期投資を優先する余地があります。

一方、変動金利は現在の金利が低くても、将来も同じとは限りません。今後の返済負担が変化する可能性を考える必要があります。

番組で紹介した金利による目安は、次のとおりです。

  • 年3%超:繰り上げ返済を強めに検討する
  • 年1%未満:投資を優先する余地が大きい
  • 年1~3%:返済と投資を併用する方法も考える

これは一律の正解ではなく、リスクを整理するための目安です。

生活防衛資金が不足している

失業や病気が起きても6~12か月生活できる現金がない状態で、余裕資金をすべて繰り上げ返済するのは慎重に考える必要があります。

住宅ローンに入れたお金は簡単には戻せません。まずは必要なときに使える現金を確保し、その後で投資や繰り上げ返済を検討する順番が考えられます。

有利な勤務先制度を利用できる

従業員持株会の奨励金や、企業型確定拠出年金における会社拠出などを利用できる場合は、その内容を確認しましょう。制度上のメリットが大きいなら、繰り上げ返済より先に活用する選択肢があります。

長い運用期間を確保できる

20代や30代など、長期で投資を続けられる人には時間があります。投資開始が10年違えば、複利が働く期間にも10年の差が生まれます。

ただし、若ければ投資を優先するべきだと一律に決められるものではありません。市場下落を受け入れられるか、収入や家計が安定しているかも重要です。

税金と資金の使いやすさも比較する

課税口座で株式や投資信託の利益、配当を受け取ると、原則として20.315%の税金がかかります。NISA口座で得た利益は、制度の範囲内で非課税です。

そのため、投資の手取り結果は、利用する口座や手数料によっても変わります。

一方、繰り上げ返済によって支払わずに済んだ利息に、運用益としての税金がかかるわけではありません。利息削減の効果をそのまま受け取れる点は、繰り上げ返済の強みです。

ただし、繰り上げ返済には流動性の低下という弱点があります。投資資産は値下がりする可能性があるものの、売却して現金化できます。住宅へ入れた資金は、家の一部分だけを売って現金にすることはできません。

税引き後の結果だけでなく、必要なときに使えるかどうかも比較しましょう。

自分に合う配分を決めるための判断基準

住宅ローンの繰り上げ返済と投資を選ぶときは、次の順番で考えると整理しやすくなります。

  1. 高金利の借金が残っていないか
  2. 生活防衛資金を確保できているか
  3. 住宅ローンは固定金利か変動金利か
  4. 現在の金利負担をどう評価するか
  5. 退職までの期間はどのくらいか
  6. 収入や雇用は安定しているか
  7. 市場下落に耐えながら投資を続けられるか
  8. 借金があることに強いストレスを感じるか
  9. 手元資金の柔軟性と早期完済のどちらを重視するか

表計算上の最適解が投資だったとしても、市場が大きく下がったときに怖くなって売却してしまえば、試算どおりにはなりません。

反対に、繰り上げ返済を優先しすぎて手元の現金がなくなれば、急な支出に対応できない可能性があります。

お金は数学ですが、同時に睡眠や安心、心の余裕にも関係します。最終的には「資産額を最大化したいのか」「毎月の返済から早く自由になりたいのか」「両方を少しずつ進めたいのか」を考えることが大切です。

よくある質問

住宅ローンの繰り上げ返済と投資は、結局どちらが得ですか?

今回の条件では、年6%で投資を続けられた場合、投資優先の試算が最も大きくなりました。ただし、投資収益は保証されず、始める時期や市場環境によって結果が変わります。繰り上げ返済には、将来の利息を確定的に減らせる利点があります。

余裕資金をすべて繰り上げ返済してもよいですか?

生活防衛資金が不足している場合は慎重に考えましょう。繰り上げ返済した資金は簡単に引き出せないため、失業や病気、急な支出に対応できる現金を先に確保する考え方があります。

投資と繰り上げ返済を両方してもよいですか?

両方を組み合わせる方法もあります。余裕資金を半分ずつにしたり、投資60%・返済40%にしたりするなど、目的に合わせて配分できます。年齢や金利、退職時期に応じて見直してもよいでしょう。

変動金利が低ければ投資を優先できますか?

現在の金利が低いことは投資を検討する材料になりますが、変動金利は将来も同じとは限りません。金利が上がった場合に家計が耐えられるかを確認したうえで判断する必要があります。

借金が不安なら繰り上げ返済を優先してもよいですか?

住宅ローンが強いストレスや睡眠不足につながっているなら、返済を優先することも合理的な選択です。最終資産額だけでなく、日々の安心や生活の安定も、お金を使う目的のひとつです。

まとめ:数字と自分の価値観の両方で決めよう

住宅ローンの繰り上げ返済と投資には、それぞれ異なる役割があります。

  • 投資は、長期的に資産を増やせる可能性がある
  • 繰り上げ返済は、負債と将来の利息を確定的に減らせる
  • 投資には価格変動とリターンの順番によるリスクがある
  • 繰り上げ返済には、手元資金が減って流動性が低下する弱点がある
  • どちらか一方ではなく、余裕資金を分ける方法もある
  • 金利、退職時期、収入の安定性、生活防衛資金を確認する
  • 最終資産額だけでなく、借金や市場変動による心理的負担も考える

まずは証券会社のアプリや返済表を開く前に、「自分にとって経済的自由とは何か」を紙に書いてみてください。

資産を増やして選択肢を広げたいのか、毎月の返済から早く自由になりたいのか。あるいは、その両方を少しずつ進めたいのか。その答えによって、自分に合う配分も見えやすくなります。

すべての人に共通する唯一の正解はありません。リスクと可能性を理解したうえで、今の家計と人生に納得できる選択をすることが大切です。今回の内容が参考になった方は、「ファイナンスおばさん・ななみ」 を購読し、次回の配信もぜひご覧ください。

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ご注意

本記事は情報提供・エンターテインメントを目的としたものであり、投資・金融 アドバイスを行うものではありません。投資に関する最終判断は、ご自身の責任 において行ってください。