持ち家と賃貸はどっちが得?住宅ローン・維持費・投資で比較

はじめに¶
同僚や友人が家を買ったと聞くと、「自分だけ取り残されているのではないか」と不安になることがあります。
さらに、「家賃は捨て金」「住宅ローンを払えば資産が残る」と言われれば、賃貸に住み続けることが損のように感じられるかもしれません。
しかし、持ち家と賃貸のどちらが経済的に合理的かは、住宅ローンの返済額だけでは判断できません。利息、管理費、修繕費、税金、保険などを含めた実際の住宅費に加え、購入しなかった場合に使える資金の運用先も考える必要があります。
この記事では、番組内で示した条件をもとに、持ち家と賃貸を数字で比較します。家を買うこと自体を否定するのではなく、自分の収入や家族、働き方に合う選択を考えるための材料としてご覧ください。
このエピソードを聴く・見る
気に入ったら、いつものプラットフォームでフォローしてください。
「家賃は捨て金、住宅ローンは資産」という考え方を疑う¶
賃貸では、家賃を払っても住宅の所有権は得られません。そのため、家賃は何も残らない支出だと考えられがちです。
一方、住宅ローンを返済すると元金が減り、その分だけ住宅の持ち分が増えます。この部分は、確かに資産形成の一部といえます。
ただし、毎月の返済額がすべて資産になるわけではありません。住宅を所有すると、次のような戻ってこない費用も発生します。
- 住宅ローンの利息
- マンションの管理費
- 修繕積立金
- 建物や設備の修繕費
- 固定資産税
- 火災保険や地震保険
- 駐車場代
- 室内設備の交換費用
つまり、賃貸だけがお金を使っているのではありません。賃貸は住居費が家賃として見えやすい一方、持ち家は複数の費用に分かれるため、戻ってこない支出が見えにくいのです。
住宅ローンの返済額すべてが資産になるわけではない¶
番組では、次の条件を例にしています。
- 住宅価格:6,000万円
- 住宅ローン:およそ5,200万円
- 返済期間:30年
- 金利:年2%前後の長期固定型を想定
- 毎月の返済額:およそ19万円
月19万円なら支払えそうに見えるかもしれません。しかし、返済開始直後は、およそ9万円が利息、元金に回るのはおよそ10万円という想定です。
最初の1年間だけでも、100万円前後が利息として支払われます。利息は住宅の持ち分にはなりません。
さらに、番組の想定では、マンションの管理費と修繕積立金に月2万~3万円、駐車場代に月2万~4万円かかるケースを挙げています。住宅価格の年1%程度を維持費として見込むなら、6,000万円の住宅では年間60万円、月に直すと約5万円です。
税金や保険なども加えると、当初は月19万円に見えた住宅費が、月30万円前後になる場合があります。そのうち、当初の元金返済が月10万円程度なら、残る約20万円は利息や維持費などです。
もちろん、実際の金利、管理費、税金、保険料、修繕費は物件や契約によって異なります。大切なのは、住宅ローンの返済額だけを見ず、所有に必要な費用を合計することです。
持ち家と賃貸を比べるなら「機会費用」も考える¶
機会費用とは、ある選択をしたことで、別の選択肢から得られた可能性を手放すことです。
例えば、次の2人を比べます。
- Aさん:同程度のマンションを月15万円で借りる
- Bさん:マンションを購入し、実際の住宅費として月30万円を払う
AさんとBさんの住宅費の差は、月15万円です。Aさんがこの差額を使わず、30年間にわたって投資したらどうなるでしょうか。
番組では、全世界株式などに分散するインデックスファンドを使い、長期の平均リターンを年6%と仮定しています。この条件で毎月15万円を30年間積み立てると、計算上は約1億5,000万円になります。
ただし、年6%は毎年の成果を保証するものではありません。値下がりや元本割れが起きる時期もあり、あくまで長期間の比較に使う想定です。
一方、Bさんが購入した家の当初価格を3,000万円とし、30年後に3倍の9,000万円になったとします。これもかなり楽観的な想定です。その間、Bさんは住宅ローンの利息や修繕費などを負担しています。
この前提だけで比較すれば、賃貸を選んで差額を投資したAさんのほうが、金融資産額では有利です。
しかし、この比較には重要な条件があります。Aさんが月15万円を本当に投資し続けることです。
差額を買い物や外食などに使ってしまえば、想定した金融資産は作れません。賃貸が自動的に有利なのではなく、住居費を抑えた分を資産形成へ回せるかがポイントです。
持ち家には「強制的に貯蓄する仕組み」がある¶
持ち家のメリットの一つは、住宅ローンの元金返済が半ば強制的な資産形成になることです。
賃貸で浮いたお金は、自由に使えます。自由だからこそ、計画がなければ消費してしまうこともあります。
住宅ローンは、毎月の返済日になれば資金を用意しなければなりません。簡単には取り崩せないため、生活に規律をもたらすことがあります。
不動産を通じて資産を築いた人がいる背景には、不動産価格の上昇だけでなく、何十年も元金を返し続けたこともあります。
そのため、持ち家と賃貸の比較では、金額だけでなく自分の行動も考える必要があります。
- 賃貸の差額を計画的に貯蓄・投資できるか
- 使えるお金があると消費してしまわないか
- 長期間の住宅ローンが家計管理の助けになるか
- 反対に、返済義務が生活や仕事の選択を狭めないか
どちらが向いているかは、家計管理の習慣によっても変わります。
高収入でも住宅費が重いと家計は苦しくなる¶
収入が高ければ、住宅購入の問題はなくなるのでしょうか。番組では、共働きの健太さんと美咲さんという夫婦の例を挙げています。
世帯の額面月収は約60万円、手取りは月約51万円です。二人は4,200万~4,800万円ほどのマンションを購入しました。
想定される毎月の支出は次のとおりです。
- 住宅ローン、管理費、修繕積立金、駐車場代:27万円
- 車や電車、タクシーなどの交通費:6万円
- 子ども2人の教育費:12万円
- 食費:9万円
- 冠婚葬祭や仕送りなどの交際費:3万円
合計は月57万円です。手取り51万円に対して、毎月6万円不足しています。
不足をクレジットカードや分割払いで補えば、生活防衛資金を増やせません。収入が高くても、固定費が大きすぎれば家計に余裕はなくなります。
番組では、住居費を手取り収入の20~25%程度に抑えるという考え方を示しています。一方、住宅費が収入の50~60%を占める状態は、収入減少や急な出費に対応しにくくなります。
これはすべての家庭に当てはまる絶対的な基準ではありません。ただし、購入後も毎月の収支が黒字になり、緊急時の預金を残せるかは重要な確認項目です。
住宅の持ち分は資産だが、すぐには使いにくい¶
住宅価格から、残っている住宅ローンを差し引いた金額を住宅の持ち分と考えます。これは確かに資産です。
ただし、預金のようにすぐ支払いへ使えるとは限りません。現金化するには、原則として住宅を売る必要があります。売却した後は、次の住まいも用意しなければなりません。
番組の例では、5年間で住宅ローンの元金が約500万円減った一方、その間に約400万円の利息を支払ったとしています。さらに、管理費、修繕積立金、税金、保険も必要です。
持ち分だけを見れば資産が増えています。しかし、その持ち分を得るために支払った全費用も含めると、見え方は変わります。
家の値上がりについても同じです。価格が上がっても、売却しなければ生活費には使えません。住宅を担保に新たに借りる方法もありますが、それは同時に負債を増やすことになります。
「資産額がいくらあるか」だけでなく、「必要なときに使えるか」も確認しておきたいポイントです。
賃貸の大きなメリットは生活を変えやすいこと¶
賃貸には、状況に応じて住居費や居住地を変えやすいという特徴があります。
例えば、仕事を失ったり収入が下がったりした場合、より家賃の安い住宅へ移ることで固定費を下げられます。転職や転勤の機会があれば、別の都市へ移ることも比較的容易です。
近隣の騒音や住環境の悪化があった場合も、契約条件に従って引っ越すという選択肢があります。
一方、持ち家では次の対応が必要になることがあります。
- 住宅を売却する
- 買い手が見つかるまで待つ
- 住宅を貸し出して管理する
- 住み続けながら住宅ローンを返済する
- 修繕や防音工事などを自分で行う
転職、独立、家族の介護など、将来の変化が大きい人にとって、住まいを変えやすいことは経済的な価値になります。
住宅購入で失う可能性があるのは、お金だけではありません。頭金や毎月の返済によって、起業、転職、学び直し、旅行などの選択肢を見送ることも、広い意味での機会費用です。
頭金と住宅費の差額を投資した場合の比較¶
番組では、もう一つの試算を示しています。
本来は住宅の頭金に使う予定だった900万円を、全世界株式のインデックスファンドへ投資するとします。長期の平均リターンを年6%と仮定し、30年間追加投資をしなければ、計算上は約5,200万円です。
さらに、家を買うと月24万円かかるところ、月9万円の賃貸住宅に住むとします。差額は月15万円ですが、すべてを投資するのではなく、生活上の追加費用を差し引いて月9万円を30年間投資します。
同じ年6%の仮定では、約9,000万円です。最初の900万円を運用した約5,200万円と合わせると、約1億4,200万円になります。
比較対象として、4,200万円で購入した住宅が30年後に約1億2,000万円になったと仮定します。その間に支払う住宅ローンの利息を約1,500万円、修繕や設備交換を約1,800万円とした例です。
この前提では、賃貸と投資を組み合わせた金融資産が、30年後の住宅価値を上回ります。
ただし、これは特定の仮定に基づく試算です。運用成果、住宅価格、修繕費などが変われば結果も変わります。「賃貸なら必ず得をする」という意味ではありません。
重要なのは、住宅購入だけを資産形成と考えず、頭金や毎月の差額を別の資産へ回した場合も比較することです。
家を買うかどうかを決める判断基準¶
持ち家が向いている可能性があるのは、次のような場合です。
- 同じ場所に10年以上住む可能性が高い
- 利息や維持費を含めても家計に余裕が残る
- 収入が減っても返済を続けられる見通しがある
- 生活防衛資金を残したまま購入できる
- 家族の事情から住まいの安定性を重視したい
- 住宅を所有する満足感に、費用を払う価値を感じる
一方、賃貸が向いている可能性があるのは、次のような場合です。
- 転職や転勤、移住の可能性がある
- 住宅購入後の固定費が高くなりすぎる
- 頭金を払うと手元資金がほとんど残らない
- 収入や家族構成が今後変わる可能性が高い
- 修繕や物件管理を自分で負担したくない
- 住宅費の差額を貯蓄や投資へ回せる
家を買うことは成功の証明ではなく、賃貸を選ぶことも人生の遅れではありません。どちらも、住まいを確保するための選択肢です。
表計算ソフトで自分の家計を比較してみよう¶
持ち家と賃貸で迷っているなら、表計算ソフトに2つの列を作って比較してみましょう。
賃貸の列に入力するもの¶
- 現在または検討中の家賃
- 家を買わずに残る頭金
- 持ち家との毎月の住宅費の差
- 差額を貯蓄・投資した場合の想定
- 引っ越しなどに必要な費用
持ち家の列に入力するもの¶
- 住宅ローンの元金
- 住宅ローンの利息
- 管理費
- 修繕積立金
- 固定資産税
- 保険
- 駐車場代
- 設備の修理・交換費用
- 家具や内装の減価
10年、20年、30年と期間を変えて比較します。投資収益や住宅価格の上昇を入力する場合は、一つの楽観的な前提だけでなく、結果が想定を下回る可能性も考えることが大切です。
また、資産額だけでなく、毎月の収支、手元に残る預金、収入が減った場合の対応も確認してください。
持ち家と賃貸に関するFAQ¶
家賃は本当に捨て金ですか?
家賃は、住居を利用するために支払う費用です。所有権は残りませんが、住宅の修繕や管理を原則として所有者側に任せられ、住み替えやすいという価値があります。持ち家にも利息、税金、保険、修繕費などの戻ってこない支出があります。
住宅ローンの返済はすべて資産になりますか?
すべてではありません。元金返済分は住宅の持ち分を増やしますが、利息は資産になりません。管理費や税金、保険、修繕費なども含めて考える必要があります。
賃貸と投資を組み合わせれば持ち家より得ですか?
前提によって異なります。賃貸の住宅費が低く、差額を長期間投資できれば金融資産を作れる可能性があります。ただし、投資には値下がりや元本割れの可能性があり、差額を使ってしまえば想定どおりにはなりません。
家を買うなら何を確認すべきですか?
住宅ローン返済額だけでなく、利息、管理費、修繕費、税金、保険、駐車場代などを合計してください。購入後も家計が黒字になり、すぐに使える預金を残せるかも重要です。
持ち家の最大のメリットは何ですか?
住宅ローン完済後に住まいが残ることや、元金返済が強制的な資産形成になることが挙げられます。また、住宅を自由に改装できることや、同じ場所に長く住める安心感を重視する人もいます。
まとめ|世間体ではなく自分の数字で決めよう¶
持ち家と賃貸のどちらが得かは、住宅ローンと家賃だけを比べても分かりません。
- 住宅ローン返済額のすべてが資産になるわけではない
- 持ち家には利息、管理費、修繕費、税金、保険などがかかる
- 賃貸では、購入との差額を本当に貯蓄・投資できるかが重要
- 持ち家には強制的な資産形成という側面がある
- 住宅の持ち分は資産だが、預金ほど自由に使えるとは限らない
- 賃貸には住居費や居住地を変えやすい柔軟性がある
- 購入後も毎月の収支が黒字になり、手元資金を残せるか確認する
- 家族、仕事、収入、価値観によって合理的な選択は変わる
家を買うこと自体が悪いわけではありません。問題は、周囲から認められるために、現在の家計では維持できない住宅を無理に購入することです。
まずは自分の家賃、購入予定価格、頭金、利息、維持費、差額の使い方を表にしてください。社会の期待ではなく、自分の数字をもとに選ぶことが、住まいと資産形成を考える第一歩です。今回の内容が参考になった方は、「ファイナンスおばさん・ななみ」 を購読し、次回の配信もぜひご覧ください。
番組をフォローする
気に入ったら、いつものプラットフォームでフォローしてください。
エピソードを視聴する¶
ご注意
本記事は情報提供・エンターテインメントを目的としたものであり、投資・金融 アドバイスを行うものではありません。投資に関する最終判断は、ご自身の責任 において行ってください。


