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ショッピングモール投資の仕組みとは?利益の源泉と赤字化する理由

ショッピングモールの固定家賃や共益費など複数の収益源を示す図

はじめに

ショッピングモールには、アパレルショップ、飲食店、スーパーマーケット、映画館など、多くのテナントが入っています。毎月それぞれの店から家賃を受け取れるなら、オーナーは安定して利益を得られるように見えるかもしれません。

しかし、館内に多くの店があり、照明がついているからといって、モール経営が黒字とは限りません。大型テナントが一社撤退したことをきっかけに、来館者、テナントの売上、家賃収入が連鎖的に減っていくこともあります。

この記事では、ショッピングモール投資の仕組みについて、主な収益源と支出、大型店が果たす役割、空き店舗が引き起こす悪循環を整理します。商業用不動産を見るときに、建物や入居率だけでなく、何を確認すべきなのかを考えていきましょう。

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ショッピングモール投資は「小さな街」を運営するビジネス

ショッピングモールの所有は、アパートの部屋をいくつか貸すこととは性質が異なります。建物の中には多数のテナントがあり、駐車場、空調、エスカレーター、エレベーター、消防設備、警備、清掃などを継続して管理しなければなりません。

新しく建設する場合は、土地と建物だけでなく、敷地内の道路や駐車場、電気、水道、換気設備なども必要です。許認可の手続きがあり、完成が遅れれば費用がさらに膨らむ可能性もあります。

すでに営業しているモールを買う場合は、入居中のテナントや人の流れを確認できます。ただし、営業中だから安全とは限りません。過去に結ばれた賃貸借契約や、先延ばしにされてきた修繕まで引き継ぐことになるからです。

ショッピングモールを買うことは、土地やコンクリートだけを買うことではありません。周辺の住民が今後も買い物に使えるお金を持ち、ブランドが出店したいと考え、人が訪れ続けるという地域の未来にも資金を投じることになります。

そのため、安い物件価格が必ずしも「お買い得」を意味するわけではありません。価格の安さが、地域の衰退、建物の老朽化、テナント流出などを反映している可能性も考える必要があります。

ショッピングモールの主な収益源

ショッピングモールの収入は、店舗から受け取る固定家賃だけではありません。複数の収益源が組み合わさることで、施設全体の経営が成り立っています。

固定家賃

最も分かりやすい収益源は、テナントが区画を使うために支払う毎月の固定家賃です。

ただし、広い区画を使っている店が、最も高い家賃を払っているとは限りません。スーパーマーケット、映画館、大手小売チェーンなどは、広い面積を比較的安い単価で借りている場合があります。

オーナーが大型店へ安く貸すのは、その店が多くの来館者を連れてくる役割を持つからです。映画館へ向かう家族が途中で洋服店や飲食店へ立ち寄れば、周辺テナントにも販売機会が生まれます。

一方、人通りの多い通路にある小さな店は、面積当たりでは高い家賃を払うことがあります。その店が借りているのは床だけではなく、多くの来館者の視線に触れる機会でもあるからです。

売上に連動する家賃

契約によっては、固定家賃に加えて、テナントの売上が一定水準を超えた場合に、その一部をオーナーが受け取ることがあります。

この仕組みでは、テナントの売上が伸びるほど、モール側の収入も増える可能性があります。そのため、オーナーはイベント、季節の装飾、子どもの遊び場、撮影スペースなどを用意し、来館者を増やして滞在時間を延ばそうとします。

こうした施策は、単に館内をにぎやかに見せるためではありません。人の流れをつくり、テナントが商品やサービスを販売できる機会を増やすための運営活動です。

共益費・サービス料

共用廊下の清掃、空調、照明、エレベーターの保守、警備、植栽、駐車場の運営などには費用がかかります。これらの費用を、テナントが共益費やサービス料として分担する契約があります。

入居する店が多ければ、共通の運営費を多くのテナントで分けられます。しかし、退去が増えると、残った店の負担が重くなる可能性があります。この仕組みは、満室に近いときには機能しやすい一方、空き区画が増えたときには経営悪化を加速させる要因にもなります。

駐車場・広告・催事スペースなど

モールには、通常の店舗区画以外から得られる収入もあります。

  • 駐車料金
  • 館内モニターやエレベーター内の広告
  • 通路中央の小型販売ブース
  • 週末の催事
  • 商品展示や新車発表会
  • 季節限定の売り場や撮影スペース

一つひとつは小さな収入でも、積み重なれば施設全体の収益源になります。特に、多くの人が通る場所にある小さなブースは、面積当たりで高い価値を持つ場合があります。

多くのテナントがいても赤字になる理由

モールには複数の収益源がありますが、同時に多額の支出も発生します。

主な支出には、電気代、水道代、従業員の給与、清掃費、警備費、設備の保守費、修理費、税金、保険料、借入金の返済などがあります。家賃収入がそのままオーナーの利益になるわけではありません。

特に注意したいのは、店が減っても運営費の多くが同じ割合では減らないことです。

営業している店が少なくても、共用廊下の照明や警備は必要です。テナントが残っている限り、空調を完全に止めることも難しいでしょう。エレベーター、エスカレーター、消防設備にも継続的な点検と保守が必要です。

さらに、屋根、配管、駐車場、空調、電気設備などに大規模な修繕が発生すれば、何か月分もの家賃収入が一度に失われる可能性もあります。

つまり、入居率が高く見えても、次のような状態なら利益が薄いことがあります。

  • 大型店が長期の低家賃契約で入っている
  • 短期契約や特別に安い家賃のテナントが多い
  • 修繕費や借入金の返済負担が重い
  • 売上の弱いテナントが多い
  • 空き区画を隠すため、利益の出にくい条件で貸している

大切なのは「何店舗が営業しているか」だけではありません。各テナントがいくら払い、どのような条件で契約し、今後も営業を続けられそうかを見る必要があります。

大型テナントの撤退がモール全体に影響する仕組み

スーパーマーケット、映画館、百貨店など、来館者を呼び込む中心的な大型店は「アンカーテナント」と呼ばれることがあります。

大型テナントは、自社の商品やサービスを売るだけではありません。館内へ人を呼び込み、その人たちを周辺の小さな店へ送る役割を果たします。

そのため、大型店が閉店すると、単に一店舗分の家賃がなくなるだけでは済まない場合があります。

  1. 大型店が撤退する
  2. モールを訪れる人が減る
  3. 周辺テナントの売上が落ちる
  4. 家賃の減額や退去を検討する店が増える
  5. 空き区画が増え、モールの魅力が下がる
  6. 共益費を分担するテナントが減る
  7. 残った店の負担が増え、さらに退去が進む

また、テナントの契約には、特定の大型店が営業していることを前提とする条項が含まれている場合があります。大型店の撤退後、小さなテナントが家賃の減額を求めたり、契約期間を短くしたり、違約金なしで退去できたりする可能性があります。

大型店の跡地を埋めることも簡単ではありません。広大な区画が特定の小売チェーン向けに設計されている場合、複数の小さな店へ分割するには、電気、水道、通路、出入り口などを造り直す必要があります。工事中は、その区画から収入を得られません。

モールの価値を左右するのは「人の流れ」

ショッピングモールの通路や設備は、無計画に配置されているわけではありません。大型店を建物の別々の端に置けば、来館者はその間にある多くの店の前を通ります。

上りと下りのエスカレーターを離して配置することで、館内を歩く距離が長くなる場合もあります。休憩用の椅子を飲食店や目立つ店舗の近くに置けば、休んでいる間も商品や広告が目に入ります。

モールは買い物を強制できませんが、人が歩く道を設計することはできます。小さなテナントは、その動線上で商品を見てもらえる機会に対して家賃を払っています。

しかし、この仕組みが働くのは、そもそも館内へ入りたいと思う人がいる間だけです。来館者が減れば、長い廊下は販売機会を生む動線ではなく、人の少なさや空き店舗を目立たせる空間へ変わってしまいます。

建物が同じでも、その中を通る人の流れが変われば、収益力は大きく変わります。商業施設の価値を考えるうえでは、床面積よりも「誰が、なぜ、どのくらい訪れ続けるのか」が重要です。

ローリング・エーカーズに見るモール衰退の連鎖

アメリカのローリング・エーカーズは、一九七〇年代に開業したショッピングモールです。最盛期には百を超える店が入り、複数の百貨店、映画館、フードコートを持つ地域の代表的な買い物スポットでした。

ところが、周辺の人口や消費の状況が変化し、近くに新しいモールができると、買い物客や大型店が少しずつ離れていきます。空き区画が増えることで施設の魅力が下がり、残った店の売上も落ち、さらに退去が進みました。

かつて数十億円規模の価値があった不動産は、最終的に数億円規模で売却されました。それでもテナントの流出は止まらず、商業部分は閉鎖されます。最後のテナントが去った後は、収入を生む資産ではなく、維持や管理にお金がかかる建物になりました。

この事例が示すのは、ある年にほぼ満室だったことが、将来の安定を保証するわけではないという点です。モールの衰退は一度の決定的な出来事ではなく、小さな悪化が次の悪化を招く形で進むことがあります。

また、アメリカでは、大型小売チェーンのシアーズが二〇一八年に破産法の適用を申請しました。シアーズのような大型店が閉店したモールでは、来館者を生む中心的な役割が失われ、周辺テナントにも影響が広がりました。

オンラインショッピング時代に生き残るモールの考え方

以前のショッピングモールには、多くの商品を一か所で見比べられるという利便性がありました。しかし、オンラインショッピングでは、スマートフォンから商品や価格を比較し、自宅への配送を頼めます。

そのため、商品を並べるだけのモールは、訪問する理由をつくりにくくなります。一方、実際に出かけなければ得にくい体験には、オンラインだけでは代替しにくい面があります。

その例として、次のような施設やサービスが挙げられます。

  • レストラン
  • スポーツジム
  • 子どもの遊び場や預かり施設
  • 映画館
  • クリニック
  • 教室
  • 仕事をするためのスペース

集合住宅、オフィス、ホテルなどを同じ敷地へ取り入れ、人が暮らし、働き、食事や運動をする場所へ変わろうとするモールもあります。

このような施設は、単なる買い物の場所ではありません。人が家から出る理由、長く滞在する理由、繰り返し訪れる理由を提供する小さな街に近い存在です。

ショッピングモール投資で確認したい判断基準

ショッピングモール投資が良いビジネスになる可能性はあります。ただし、建物が大きいことや入居率が高いことだけでは判断できません。

検討するときは、少なくとも次の点を分けて考える必要があります。

周辺地域に今後も需要があるか

周辺の人口や消費の状況が変われば、同じ建物でも価値は変化します。現在の来館者数だけでなく、地域に住む人や働く人が今後も施設を利用する理由があるかを考えます。

大型テナントへの依存度は高すぎないか

大型店は人の流れを生みますが、一社への依存が強いほど、撤退時の影響も大きくなります。その店が閉じた場合、ほかの目的で来館者を呼べるかが重要です。

入居率の中身は健全か

高い入居率でも、低家賃や短期契約のテナントが多ければ、安定した収益につながらない可能性があります。家賃、契約期間、減額や退去に関する条項まで確認する必要があります。

修繕と固定的な支出を負担できるか

屋根、空調、配管、エレベーター、駐車場などには、継続的な保守と修繕が必要です。テナントが減っても残る費用を含め、収入だけでなく支出の構造を見ることが欠かせません。

買い物以外の来館理由があるか

オンラインで代替しやすい物販だけに依存しているか、飲食、運動、医療、娯楽、仕事など、現地へ行く理由を複数持っているかも判断材料になります。

なお、賃貸用不動産を扱う会社を通じて、複数の物件へ間接的に投資する考え方もあります。複数物件を保有する仕組みには、一棟へ資産を集中させる場合と比べ、個別物件の影響を分散しやすい面があります。ただし、損失を避けられるとは限らず、会社や保有物件の内容を確認する必要があります。

ショッピングモール投資に関するFAQ

ショッピングモールは何から収入を得ていますか?

主な収益源は、固定家賃、売上に連動する家賃、共益費やサービス料、駐車料金、広告、催事スペースなどです。複数の収入を組み合わせて施設を運営しています。

入居率が高ければ経営は安定していますか?

入居率だけでは判断できません。低い家賃や短期契約で空き区画を埋めている場合や、修繕費・借入金の返済が重い場合は、入居率が高く見えても利益が薄い可能性があります。

なぜ大型店は安い家賃で入居できるのですか?

大型店には、多くの来館者を呼び込む役割があるためです。オーナーは大型店から受け取る家賃だけでなく、その店がつくる人の流れによって、周辺の小規模テナントから家賃を得る仕組みを考えています。

大型テナントが撤退すると何が起こりますか?

来館者が減り、周辺店舗の売上や家賃負担能力が低下する可能性があります。契約内容によっては、ほかのテナントが家賃減額や退去を求められる場合もあり、空き店舗の増加につながることがあります。

安く売られているモールは投資機会になりますか?

安いという理由だけでは判断できません。地域の需要低下、老朽化、大型店の撤退、修繕の先送りなどが価格に反映されている可能性があります。購入価格だけでなく、将来の収入と支出、契約内容、人の流れを確認することが重要です。

まとめ|建物ではなく人の流れを見る

ショッピングモールは、固定家賃だけで利益を生む単純な不動産ではありません。売上連動家賃、共益費、広告、駐車場、催事などの収入と、多額の運営費や修繕費が組み合わさった一つの金融システムです。

判断するときに覚えておきたいのは、次の点です。

  • 高い入居率が高い利益を意味するとは限らない
  • 大型店は家賃以上に、人の流れを生む役割を持つ
  • 空き店舗が増えても、運営費の多くはすぐには減らない
  • 物件価格の安さが、将来の負担を示している場合がある
  • 地域の変化や買い物習慣の変化が建物の価値を左右する
  • 現地へ行く理由を複数持つモールほど、変化に対応しやすい可能性がある

商業施設で本当に価値を持つのは、床や壁だけではありません。その場所を訪れたいと思う人と、その人たちが館内を歩く流れです。

不動産や資産形成を考えるときも、見た目の大きさや表面的な数字だけでなく、「何が収入を支え、何が崩れたときに連鎖が始まるのか」を確認する視点が役立ちます。

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ご注意

本記事は情報提供・エンターテインメントを目的としたものであり、投資・金融 アドバイスを行うものではありません。投資に関する最終判断は、ご自身の責任 において行ってください。